全部食べたい!

どんぶり三昧!

市名に数字が入った一関市、二戸市、三沢市。
東日本大震災からの復興に取り組む東北地方で、この3市は、東北内外に元気を発信中だ。
今回は、みんな大好きな「どんぶり」で、元気を発信。
3市の個性が際立つどんぶりを食べれば力がみなぎること間違いなし。
さあ! イチ、ニの、サンで、いっきに平らげよう!

一関市民に愛される「カツ丼」はソースと出汁が決め手

 「カツ丼」と聞くと卵とじのカツ丼を想起するだろう。しかし、一関市で市民権を得ているのは、卵とじのそれではない。
 JR一ノ関駅前にある、和食レストラン松竹の「ソースカツ丼」は、わざわざ東京から新幹線に乗って食べに来るお客がいると言う。そんな噂を聞き、いても立ってもいられず店の暖簾をくぐった。
 店内は老舗の食堂の佇まい。夕食どきの店内には、次々とお客が入ってくる。やはりオーダーするのは皆「カツ丼」だ。
 ソースカツ丼が目の前に運ばれてきた。丼の蓋の間から垣間見えるカツ。蓋をあけるとカツが3枚も乗っているではないか。ソースの味はそれほど塩辛くなく、甘みを感じる。出汁が効いているのだ。出汁とウスターソースの絶妙なバランスで、どんどん食べ進み、あっという間に完食。一度食べたら忘れられない味。東京から食べに来るのも納得だ。
 次に訪れたのは、一関市千厩町にある、創業江戸中期と書かれた看板が目を引く、老舗食堂のカツ丼は「あんかけかつ丼」だ。約70年前に考案されたメニューで、今では千厩町のソウルフードといわれている。
 千厩町にはもともと、地元で「すっぽこ」と呼ばれるあんかけうどんがある。カツの衣のサクサク感を活かしたいと、現在のご主人の祖母が考案したのが「あんかけかつ丼」だ。
 サクサクのロースカツの上にあったかいあんかけ。あんは、和風だしにソースを加えた優しい味だ。程よい酸味がキャベツとご飯にマッチし、食欲を掻き立てる。
 一関では「他県でカツ丼をオーダーしたら、卵とじで驚いた」という話も聞こえて来る。そこまで市民に浸透している「カツ丼」。一関でしか味わえないカツ丼を、ぜひ。

和風レストラン 松竹

大正9 年(1920)創業。今年で100年になる和風レストラン松竹。「ソースカツ丼」は、創業当初からあるという。一度食べたらまた食べたくなるカツ丼は、リピーターも多い。店内には、有名人のサインがずらり。常連客の中には、カツソース別でオーダーする人もいるとか。

ジューシーなカツど〜んと3枚のせ

たたいて薄く伸ばしたロースカツに、甘めのソース味のタレ。
ヒレカツもある。カツ単品のオーダーも可能。
  • JR一ノ関駅前の老舗。岩手県より、新型コロナ感染対策のモデル店舗に指定されている。
  • 4代目の細川雄司さんと若女将の佳代さん。
  • 和風レストラン 松竹
  • ● 岩手県一関市上大槻街2-1
  • ● TEL 0191-23-3318
  • ● 営業時間/11:00〜14:00、17:00〜19:00
  • ● 定休日/月曜

小角(こっかど)食堂

江戸中期に創業したと言われている店・小角食堂。食堂を始めたのは大正14年。千厩のソウルフードと言われる「あんかけかつ丼」は、約70年前、ご主人の門間浩さんの祖母が考案したという。今年4月に、父である先代が他界。現在浩さんは、母と弟の悟さんと3人、その味を継承している。

サクサクカツに
 あったか〜いあんかけ

たたいて薄く伸ばしたロースカツに、甘めのソース味のタレ。
ヒレカツもある。カツ単品のオーダーも可能。
  • 懐かしい雰囲気が漂う店。代が変わっても、味は変わらない。
  • 主人の門間浩さん(左)と、弟の悟さん(右)。悟さんは兼業農家。店のお米は、自家栽培米だ。
  • 小角食堂
  • ● 岩手県一関市千厩町千厩字町130
  • ● TEL 0191-52-2319
  • ● 営業時間/11:00〜15:00、17:00〜19:00
  • ● 定休日/日曜
「竹はる」の店主・竹田大明さん。

牛・豚・鶏が揃う肉の王国

 東に折爪岳、西に稲庭高原を有する岩手県二戸市。自然に恵まれたこの地で育つのが「にのへ三大ミート」といわれる牛・豚・鶏である。
 近年、健康志向の方をはじめ、多くの方に評価の高い「いわて短角和牛」。「短角亭」の槻木秀明店長はその特徴を「ヘルシーな赤身肉だが味がある」という。夏山冬里(なつやまふゆさと)方式で飼育され、夏は稲庭高原でストレスなく過ごすため健康的とも。そして、折爪岳の麓で育つ「佐助豚(さすけぶた)」。きめ細かい肉質と低い温度で溶ける脂が肉の旨みを際立たせ、一度味わったら忘れられないといわれる逸品だ。また、二戸地域は全国トップクラスのブランド若鶏の生産地。その中の一つである「菜彩鶏(さいさいどり)」は、植物由来のタンパク質で育つベジタリアンチキンとして注目されている。あっさりした味わいと引き立つ旨みが評判だ。
 二戸市には、地元自慢の三大ミートを提供する食事処が多い。今回紹介する3店のほかにも自慢の店があるので、食べ歩きを楽しんでほしい。

炭火焼 二戸大吉

 「菜彩鶏」を使った焼き鳥が名物。木炭でじっくりと焼き上げた鶏肉は、香ばしく、噛むたびに肉汁があふれる。味の決め手となる塩は「銘柄もブレンド割合も秘密」と店主の小滝喜美夫さんは笑う。もちろんタレも秘伝中の秘伝だ。その焼き鳥を乗せた「やきとり丼」は、菜彩鶏の旨味と味付けの妙を堪能できる丼である。

肉汁あふれる
「菜彩鶏」

鶏肉を切り分け、口にするときのバランスを考えて串に刺す。
  • ● 岩手県二戸市福岡字橋場23
  • ● TEL 0195-23-3320
  • ● 営業時間/17:30〜23:00(22:30 L.O.)
  • ● 定休日/日曜
  • ※新型コロナウイルス感染症予防のため、東北以外のお客様にご遠慮いただいております。ご了承ください。

焼肉冷麺 短角亭

 「いわて短角和牛」の専門店として赤身肉からホルモンまで提供。ランチタイムの人気メニューは、いわて短角和牛を手頃な価格で味わえる「短角牛カルビ丼A 」。おいしさのポイントは「赤身肉の旨みを引き出すために火を通し過ぎないこと」と槻木秀明店長。さらに甘辛いタレで味付けされた肉と温玉の黄身の相性が抜群で箸が進む。

ヘルシーで旨い
「いわて短角和牛」

「日替わり焼肉ランチもおすすめ」と槻木秀明店長。
  • ● 岩手県二戸市石切所字荷渡22-2
  • ● TEL 0195-23-0829
  • ● 営業時間/11:00〜22:00(ランチ11:00〜14:00、日曜・祝日を除く)
  • ● 定休日/12月31日・1月1日

食事処 竹はる

 「佐助豚」の魅力を満喫できるのが、創業から約50年間も看板を張り続けている「肉丼」だ。竹田大明店長が「佐助豚」と出会ったのは約10年前。肉質が柔らかく臭みがなく、脂身もおいしかったことから、店で使用する豚肉を佐助豚に変更し、今の肉丼となった。肉の旨みを引き出すために切り方や大きさまで考えられた丼は、県外客からも愛されている。

とろけるような脂身の
「佐助豚」

「オレ肉丼!」の看板につられて入店する人も。
  • ● 岩手県二戸市堀野字長地70
  • ● TEL 0195-23-4207
  • ● 営業時間/11:00〜15:00、17:00〜22:00
  • ※スープがなくなりしだい終了
  • ● 定休日/月曜

鮮度の良さを最大限に生かす上品な海鮮丼

 青森県東部、太平洋に面する三沢市は、新鮮な魚介の宝庫。沖合いは親潮と黒潮のぶつかる潮目にあたり、エサとなるプランクトンが多く発生するため、種類も豊富で栄養状態のよい魚がたくさん獲れる。夏〜秋のイカ、秋〜冬のひらめ、冬の北寄。三沢の魚はどれも鮮度抜群。漁港が近いことから、多くの魚が生きた状態(活魚)で出回っており、より新鮮な旬の魚を楽しむことができるのも大きな特徴だ。
 そんな、鮮度自慢の三沢の魚介を120パーセント生かすのが、三沢の料理人たち。三沢をはじめ青森県内で獲れる魚の旬や特徴、もっともいい生かし方を熟知している。また、しっかりと修行を積んで開業している店主が多く、素材を知り尽くした上で、いかようにも生かすことができる確かな技術もある。そして何より、地元の旬のものをとにかく美味しく食べてほしいという強い思い。新鮮さを謳ってのっけただけの海鮮丼も多いが、三沢の丼はそれらとは一線を画す。きちんと手を加え、素材のうまみを存分に引き出している。新鮮なのは当たり前。豪快さとはまた違った、どこか品のある三沢の海鮮丼の数々をぜひ味わってほしい。

旬の味 炭火焼いろり

抜群の鮮度を誇る「三沢昼いか」を丼で

 昼に獲れて夕方には漁港に荷揚げされる「三沢昼いか」。翌朝には築地など都心の市場にも並び、その鮮度と味に定評のある三沢が誇るブランドスルメイカだ。
 そんな活イカをいち早く提供しはじめた「いろり」では、活イカ刺しをたっぷりのせた丼を新メニューとして考案。活イカの魅力をもっと知ってほしいとの思いから生まれたという。新鮮なイカの肝を叩いて煮切り醤油に溶いたものを、とろりとかけていただく。透き通った身にしっかりとした歯ごたえ、噛むほどに増す甘み。舌で味わうだけでなく、目でも楽しめる極上の一品だ。

他では味わえない透明な身とプリプリ食感

歯ごたえのある身は刺しよりも細く切る。下足や軟骨まで余すところなく一杯分。
  • 東京の割烹で修行した店主の工藤亮さんは昨年代替わりしたばかり。
  • 新鮮な肝は臭みがまったくなく、色も鮮やか。煮切り醤油と合わさって濃厚な味わい。
  • ● 青森県三沢市中央町2-5-35
  • ● TEL 0176-57-2719
  • ● 営業時間/17:00〜22:00(L.O 21:30)
  • ● 定休日/日曜日

青森割烹 久庵

ふっくら、やわらかい三沢の新しい名物

 三沢の穴子の一番の特徴はふっくらと身がやわらかいこと。活穴子と呼ばれる生きた状態で出回り、サイズも大きく脂がのっている。「青森割烹 久庵」で提供しているのは、煮穴子を軽く炙ってご飯にのせた穴子丼。口に入れた途端、ふわりと身がほぐれ、豊かな香りが鼻に抜ける。おすすめは半分をそのまま、残りは薬味と特製出汁でお茶漬けにしていただく食べ方だが、やさしい旨みが口いっぱいに広がりこれがまた絶品なのだ。
 三沢では昔から穴子は獲れたが、下処理が面倒なことから積極的に使う人は少なかったのだそう。店主の久保慶太さんは、三沢の夏の魚介を使った名物を、と考えついたという。今後、新たな名物として定着することを目指している。

二度楽しめるふっくら穴子

ふっくらと厚みのある穴子を半身分のせて。三沢産穴子丼(ひつまぶし風) 1,300円(税込)
  • 特製出汁のお茶漬けは滋味深い味わい。
  • 店主の久保慶太さんは東京の割烹や三沢市内の寿司屋で修行を積み、2年前に自身の店をオープン。
  • ● 青森県三沢市幸町1-9-4
  • ● TEL 0176-53-2310
  • ● 営業時間/ランチ11:30〜13:30(L.O13:00)17:00〜22:00(L.O21:30)
  • ● 定休日/日曜日(不定休あり)

鮨 大竹

旨みをぎゅっと凝縮食感も楽しめる

 青森県は天然ひらめの漁獲量日本一。中でも三沢のひらめは大きく身が厚いものが多い。また、旨みを長持ちさせる神経抜き活締めという処理によって、最高の状態で提供できる。これにより鮮度を保ちながら遠方へ輸送することも可能で、品質のいいひらめの供給に一役買っている。「鮨 大竹」は開店から42年の老舗で、鮮度にこだわった握りや海鮮丼は地元の常連客をはじめ県内外の客からも好評を得ている。大将の佐藤秀雄さんが「三沢市ではうちが最初かな」というひらめの昆布〆丼も人気メニューの一つ。切り身にして昆布で一晩締めたひらめは旨みが凝縮され、ほどよい弾力と上品な甘みが感じられる。大将こだわりの酢飯とも相性抜群だ。

歯ごたえと甘みがぐんと引き立つ

つけダレにさっと絡めて提供。
  • 二人三脚で支え合ってきた大将の佐藤秀雄さんと女将の悦子さん。
  • 一晩置くと身が締まり、多少粘り気も出る。
  • ● 青森県三沢市岡三沢1-1-6
  • ● TEL 0176-57-2923
  • ● 営業時間/ランチ11:00〜14:00(L.O13:30)16:00〜22:00(L.O21:00)
  • ● 定休日/月曜日