こんにちは。
岩手医科大学薬学部に勤務する杉山育美です。
薬剤師の目線で、いますぐ誰かに話したくなる「薬の豆知識」をお届けいたします。
今回は、【アスリートと薬のお話】です。

突然ですが、私はスポーツファーマシストという資格を持っています。
「ファーマシスト」とは「薬剤師」のこと。どんなことをする薬剤師かご存知でしょうか?
私はこの資格について説明する際、「アスリートをドーピングから守る薬剤師」と言っています。
ドーピング検査をする人、と勘違いされることもありますが、そうではなく、アスリートがドーピングをしないようにアドバイスをする役割を担っています。

ドーピングとは、アスリートが良い結果を得るために体に作用する成分を摂取したり、競技力が向上するような方法を利用したりすることです。
ドーピングで使用する成分と聞いて想像するのは、筋肉をムキムキにするような成分や、違法薬物などでしょうか?
このような成分を意図的に摂取することはもちろん禁止です。

ですが!実は病気の治療に用いる薬の中にも禁止物質が含まれていることがあるのです。

例えば、喘息発作などでゼーゼーヒューヒューしているときに「ツロブテロール」という成分が入った貼り薬(テープ剤)が処方されることがあり、患者さんが使用することは全く問題ありません。(違法薬物でもありません!)

しかし、アスリートがこの薬を使用するとドーピング違反となってしまいます。
ツロブテロールは気管支を広げて呼吸を楽にする効果があるからです。
つまり、ツロブテロールが生体内に入ることで呼吸をしやすくなるので、楽に走れるようになるなどパフォーマンスの向上を手助けすると考えられます。
そのため、アスリートが使用してはいけないことになっているのです。
(ただし、治療使用特例(TUE)というものがあり、治療に必要であると認められれば使用できます。)

このように、病気の治療を目的に使っているお薬なのに、服用することでアスリートにとっては有利に働くという理由で‘実は’ドーピング禁止物質が入っていたなんてことがあります。

そして上述の例で気づいたかもしれませんが、ドーピングで気を付けなくてはならないのは飲む薬だけではありません。 テープ剤のように体に貼るものや、クリーム剤のように塗るものだとしても、もし禁止物質が含まれていて、それが生体内に入ってしまったら違反となるので気を付けてくださいね。

スポーツの競技大会に出られる予定がある方、年齢や競技レベルに関係なくお薬を使う場合には、ぜひ、スポーツファーマシストにご相談ください。

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杉山育美
岩手医科大学薬学部 講師 博士(薬学)
薬剤師
スポーツファーマシスト
アスリートフードマイスター
薬剤師を身近に感じてもらいたいとSNSなどを通して発信中。
アスリートやサポートスタッフ、ご家族に対してアンチ・ドーピング活動をすると共に勝利のためには健康であることの重要性もお伝えしている。
近年はアスリートを含む女性の健康サポートにも力を入れている。