グリーン動物病院 田口大介院長

ケガや病気で輸血を必要とするペットがいる。その時に血液を提供してくれるのが供血犬や供血猫だ。この子たちは動物病院において獣医師や看護スタッフと一緒にペットの命を救う仲間である。その大切さについて盛岡にある「グリーン動物病院」田口大介院長に伺った。

 献血ドナー供血犬について知ろう

 ペットとして飼われている犬にも「輸血が必要」となる場面がある。例えば、重度の貧血。田口先生は「ペットの高齢化によってその発生頻度が増えてきている」と話す。
 「治療により改善することもありますが、状態が悪い場合は、輸血も必要となります」
 しかし、血液バンクのような血液供給システムがなく、血液は長期保存が難しいため、そのつど血液が必要となる。そこで活躍するのが供血犬だ。では実際に輸血する場合、どれくらいの量を必要とするのだろうか。
 「輸血を必要とする犬の体重にもよりますが、採血には100〜200mlを必要とする場合もあります。しかし、採血をした犬の具合が悪くなっては大変なので、体重10以上の犬にお願いしています」と田口先生。採血に要する時間は5分程度だが、血管に針を刺すため、採血中は我慢してもらわなくてはならない。そのため、ゴールデンレトリーバーやラブラドールレトリーバーなど穏やかな性質の犬種が適しているという。
 現在、グリーン動物病院盛岡病院にてボランティア協力しているのがゴールデンレトリバーのまるちゃん。飼い主の藤澤さんは「病院から初めて献血依頼が来たのは2歳のときでした。もし自分の犬が同じ状況になったらと考えたら、居てもたってもいられなくなり、まるを連れて病院に駆けつけました」と話す。ラブラドールレトリバーの小鉄くんの飼い主の佐々木さんも「小鉄がいることで助かる子がいるなら」という思いで協力している。
 とはいえ、献血ができる状況やタイミングが必ずしも一致するとは限らない。そのために、多くの供血犬を必要としている。
 「血液さえあれば病態が好転することも、明日へと命をつなげられることも決して少なくないのです。しかし、その血液は売っていません。だから、供血犬としてボランティアをしてくれる犬と飼い主さんの存在は非常に重要なのです」
 現在、盛岡病院には供血猫のラブ、南部町病院には供血猫のピースと供血犬のシバが住んでいる。そのほか引退した供血猫3匹・供血犬1匹がいる。
 田口先生は「猫は猫部屋や院内をうろついて過ごしていますが、運動量が多い犬は十分に遊んであげるには限界があり、供血犬の場合はボランティアに頼らざるを得ません。
 「当院では、献血が終わったらおいしいおやつというごほうびが待っています。これがうれしくて、嫌な献血の時間を耐えてくれているのです」と田口先生。
 供血犬になると健康を害するのではと不安に思う人もいるだろう。南部町病院で長い間協力してくれたラブラドールレトリバーのさくらちゃんは、引退したあとも健康で13歳を迎えた。
 田口院長は「飼い主さんと一緒にペットの検査・治療する」を大切にしている。というのは、飼い主がペットから受ける恩恵は計り知れないからである。
 「ペットと少しでも長く楽しく過ごせるための手伝いをするのが私達の仕事。そして、ピンチの時にかけつけてくれるボランティア供血犬と飼い主さんは心強いサポーターです」
 人生の長い時間を共に過ごすペットのために飼い主ができることを、供血犬を通して考えてみてはいかがだろう。

  • グリーン動物病院院長・田口大介先生。岩手県二戸市出身、宮崎大学獣医学部卒業。木〜土曜は盛岡病院で、それ以外の日は南部町病院で診療にあたる。
  • 盛岡病院の獣医師・信貴智子先生。信貴先生に甘えモードの小鉄くん。
  • 盛岡病院の看板猫兼供血猫のラブ。背中のハートマークがチャームポイント。
  • 南部町病院の供血猫たち。左からピース(オス2歳)、モモ(メス15歳)、チキン(オス8歳)。モモとチキンは引退後も看板猫として活躍中。
  • 輸血中の様子。供血を受けることで、明日へといのちがつながる子も多い。
  • グリーン動物病院

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  • 休診日/日・月曜 ※臨時休診あり
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    ※臨時休診あり
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