文化や風土を生かした地場産品を国内外へ

 「IWATE FOOD&CRAFTAWARD 2022」は、昭和48年(1973)に「いわて特産品コンクール」として始まり、途中に名称を変えながらも今年度で50回目を数える。本アワードの主催は、岩手県といわての物産展等実行委員会(事務局/公益財団法人いわて産業振興センター)。岩手県を代表する新たな特産品の開発を促進するとともに、歴史や文化、風土の特徴を生かした魅力ある特産品を発掘するのを目的としている。年1回開催される本アワードに出品できるのは、過去1年以内に県内で開発・改良・製造されたもの。今年度は53事業者92品の応募があった。
 記念すべき50年の節目に入賞したのは8品で、グランプリに輝いたのは、フード部門が株式会社肉のふがね(岩手町)の「岩手短角和牛コンビーフ」、クラフト部門が株式会社地熱染色研究所(八幡平市)の「GEOCOLORネックストラップ」だった。
 昭和48年に本アワードの前身である「いわて特産品コンクール」が始まったときは、社団法人岩手県産業貿易振興協会が各地で開催される「産業まつり」に併せて行っていたという。第1回の出品数は480品で入賞者には、戸田久(一戸町)や回進堂(奥州市)、みちのくあかね会(盛岡市)など馴染みのある名前がみられる。その後、平成20年(2008)に一本化され、現在の名前になったのは4年前だ。
 この50年での出品数は3万5389品にものぼる。公益財団法人いわて産業振興センター産業支援部地域産業担当の鈴木佳代子主事は、「時代の流れと共に商品の特徴が変化し、近年はSDGsを意識したものが多い」と話す。一方で、パッケージにも変化があり、首都圏を意識したデザインが増えている。特筆すべきなのは、平成20年代頃から盛岡農業高校や宮古水産高校など高校生も出品するようになったことだ。
 これまでの入賞商品には、ぴょんぴょん舎(盛岡市)の「盛岡冷麺」、松栄堂(一関市)の「ごま摺り団子」など、全国的に知られているものが多い。クラフトではクラスター(宮古市)の「本染め刺子ダウンジャケット」や久慈琥珀の「Amjelogueネックレス」が注目を集めている。今回の入賞商品も岩手県を代表する商品として長く愛されることだろう。

これまでの概念を覆した無添加コンビーフ

 岩手短角和牛のおいしさを引き出す

 今年度、フード部門でグランプリを受賞したのは、肉のふがねの「岩手短角和牛コンビーフ」。希少種である岩手短角和牛のウデ肉を天然塩「のだ塩」と奄美大島の天然砂糖で5日間漬け込み、肉の旨味を最大限に引き出したあと、野菜スープで3時間かけて煮込んで仕上げたもの。保存料を一切使用していない無添加のコンビーフである。
 ウデ肉はコラーゲンを含んだ濃厚な味が特徴。じっくりと煮ているため余分な脂が抜け、赤身肉の旨味と甘さを十分に堪能できるようになっている。口の中でほろほろと崩れ、味の余韻が長く残り、従来のコンビーフと一線を画しているのが驚きだ。
 代表取締役の府金伸治さんは、「Nose to tail」をコンセプトにする。牛を1頭で買い、余すことなく使うことで「岩手短角和牛のいる風景」を守ろうとしている。今回のコンビーフや無添加生ハム「セシーナ」の製造もそのためだ。府金さんは「岩手の風土と食の魅力を発信していきたい。そして、海外も目指していきたい」と意欲を見せる。

  • タマネギとローリエの野菜スープでウデ肉を煮る。
  • 煮たウデ肉とタマネギ、野菜スープを機械にかけて繊維をほぐす。
  • 肉のふがね代表取締役・府金伸治さん。
  • ■事業者連絡先
  • 株式会社 肉のふがね 岩手川口工場直営店
  • 岩手県岩手郡岩手町大字川口5-9-1
  • TEL 0195-68-7383
  • 営業時間/ 10:00〜19:00(土・日曜、祝日9:00〜)
  • 定休日/水曜
  • https://fugane.jp

技術とアイデアで胸元をおしゃれに演出

 細部までこだわったネックストラップ

 日本初の地熱発電所発祥の地・八幡平市松川に、世界で類をみない技法で染められる八幡平地熱蒸気染色がある。
 染色工程は布を糸で絞ることから始まる。完成をイメージしながら何色もの染料を着色していくのだが、ここで染色作家の個性が出てくるという。その後、地熱蒸気で充満した窯で蒸すことにより、不要な染料の色だけを脱色させる。これで、あの美しいグラデーションが生まれるのだ。まさに大地の色である。
 今年度、クラフト部門でグランプリを受賞した「GEOCOLORネックストラップ」は、八幡平の雄大な自然を色で映している。これらの色はスーツの胸元の差し色にもなり、ビジネスシーンを明るくする。機能性にも工夫がみられる。肌に当たる内側の部分には柔らかい布を使い、スナップでも脱着できるようにした。
 「八幡平市内でモニターをしたとき、このスナップのおかげで髪型が崩れなくていいと好評でした」と染色作家の高橋一行さん。芸術性と機能性を組み合わせたネックストラップは、日常に彩りを添え、職場を明るいものにしてくれるに違いない。

  • 先端の合わせ部分をスナップにし、着脱しやすいように工夫されている。スナップにしたことにより、巻き込み防止も可能にした。
  • 布を糸で絞ったあと染色し、高温の地熱蒸気で蒸す。
  • 地熱染色研究所の染色作家・高橋一行さん。
  • ■事業者連絡先
  • 株式会社 地熱染色研究所
  • 岩手県八幡平市松尾寄木松川国有林559 林班ヲ小班
  • TEL 0195-78-2451
  • 営業時間/ 8:30〜17:30
  • 定休日/不定休
  • https://geo-color.com
  • いわての物産展等実行委員会・岩手県(事務局/公益財団法人いわて産業振興センター)
  • 岩手県盛岡市北飯岡2-4-26
  • TEL 019-631-3823
  • https://www.joho-iwate.or.jp