「志たあめや」が創業したのは天保3年(1832)。「あめや」の名の通り、創業当初は畑で大麦を育て、その麦芽で水飴などを作って売っていたそうだ。「志た」は、店に面する「うれいら通り」が小本街道の宿場町だった頃、北側を「下宿」、南側を「上宿」と呼んだことに由来するという。ちなみに、通りの向かいには「上あめや」がある(現在は精肉店)。
 明治維新、戦争、高度経済成長、バブル崩壊、そして今は、新型コロナウイルスの感染拡大。190年もの間、歴史上の大きな出来事に何度も立ち合ってきた同店。特に戦後は物資も乏しく、アメリカからの援助物資に入っていたトウモロコシの粉で飴を作ったこともあったという。
 現在は5代目の八重樫政二さんを筆頭に、3世代で店を切り盛りしている。店内には、創業の源流を汲む飴、古くから作り続けている駄菓子のほか、和菓子、洋菓子、そしてパンが並ぶ。昔ながらの製法で作り、世代を超えて親しまれているロングセラーが、この店には多い。
 たぬきを象ったケーキ「たぬきさん」も、昭和40年代からある定番商品。近年、「懐かしい昭和のケーキ」としてたぬきケーキが注目されるようになり、遠方から買いに来るファンも増えた。2017年から開催している「たぬきケーキまつり」は毎年盛況、県内各地のイベント出店でも早々に売り切れる人気者だ。
 テレビや雑誌などに取り上げられることも増えた志たあめやだが、「まちのお菓子屋さん」というスタンスを何より大切にしているという。訪れるたび、どこかホッとするような気持ちになるのは、そのせいだろうか。

  • 志たあめや

  • 岩手県下閉伊郡岩泉町岩泉下宿25
  • TEL 0194-22-2226
  • 営業時間 8:30〜19:00
  • 定休日 不定休
  • https://www.shitaameya.com/