サイクリングでめぐる遠野ガストロノミーツアー

旅のクライマックスシェフとソムリエの饗宴

 「遠野の日々を詰め込む」というテーマを店名にしたレストラン「おのひづめ」。菅田シェフは、新時代の若き才能あふれる料理人を発掘するコンペティション「RED U? 35」においてシルバーEGGを受賞した経歴があり、全国からその料理を求めて美食家が遠野を訪れていると聞く。
 シェフの1日は、自ら育てているジャージー牛の牛乳搾りから始まる。フレッシュな牛乳は、チーズになり、ジェラートになる。さらに、料理に使う水は、遠野の湧水・稲荷穴に毎朝くみに行くという徹底ぶり。これを聞いただけで、菅田シェフの料理を味わってみたくなるだろう。
 さらに、遠野出身のソムリエ松田さんが、それぞれの料理にワインをコーディネート。ツアーのクライマックスとなる、蔵をリノベーションした会場で味わうディナーは、7種のペアリングが楽しめる。菅田シェフとソムリエ松田氏による饗宴は、またとない好機。とくと味わってほしい。

  • 前菜3点は「焼きトマトのカプレーゼ、ナスとトマトのパルミジャーナ、今日のチーズ」
  • 「 とうもろこしの冷製ポタージュ」朝搾りのジャージー牛乳、芯からとった出汁がとうもろこしの甘さを引き出す。
  • 「カルツォーネ」自家製の熟成チーズとフレッシュなチーズ、生ハムを包んで焼き上げた。ソースは黒ニンニクのフォンドボー。
  • 「 イカとアカヤマドリタケのひっつみのようなパスタ」ソースには自家製チーズで出たホエーを使用。ホヤのフレーク振りかけて。
  • 「 ムール貝のクラムチャウダー」秋冬が旬のムール貝は漁師から直接仕入れる。フレッシュな牛乳、ホエーで仕上げる。
  • 「ジャージー牛のジェラート」ジャージー牛乳と砂糖のみで作るジェラート。シンプル故に牛乳の味がわかる。

サイクリングで遠野の風に吹かれて

 旅の醍醐味は、知らない土地に行って、現地の人の暮らしを垣間見ることかもしれない。コロナ禍に登場した旅のスタイル「マイクロツーリズム」は、近くの街を深く掘り下げながら、じっくりゆっくり旅をするが、今回のツアーはまさに、旅の醍醐味が詰まっていると言えるだろう。
 ソムリエとしてディナーを演出してくれる松田さん。クライマックスのディナーまでは、遠野の案内人として同行する。移動手段は自転車。遠野市内サイクリングだ。
 普段、車から眺めている景色も遠野の風を感じながら自転車で行けば、風景が違って見えてくるから不思議だ。地元で暮らすように路地裏や田んぼの中を颯爽とサイクリング。遠野をよく知る松田さんに案内されて自転車のペダルを漕げば、学生時代に友だちの家に遊びに来たようなノスタルジーに誘われる。

どんなペアリングを味わえるかは、当日のお楽しみ。
ディナー会場は、リノベーションした土蔵「いちの蔵」。

遠野の風を感じて地元で暮らすように旅をする

松田さんの道案内で遠野路をサイクリング。自転車ならではの目線で、地元で暮らすような旅を。

旅を満喫遠野を知り、味わう

 サイクリング旅で訪れる場所は「伝承園」。曲り家の中で郷土食「ひっつみ」を味わい、小休止。「かっぱ茶屋」でソフトクリームを食べる方は、ここでは腹八分にしておこう。少し歩くと、カッパ淵に到着。川の流れは、穏やかだろうか、それとも早い流れだろうか。いずれにしてもカッパがいたずらするかもしれないので、要注意して見学しよう。
 街中まで戻り、旅の蔵遠野で買い物をしたら、遠野市立博物館へ。日本で最初の民俗学専門の博物館。ガイドの話を聞きながら、遠野の民俗を知ると、遠野物語をより深く知ることができる。
 遠野の新名所「こども本の森 遠野」を見学。天井まで見渡す限り本、本、本……。まさに本でできた森だ。館内をぐるりと巡ると、土間の向こうに土蔵が見える。この「いちの蔵」が、ディナーの会場だ。
 土蔵の扉を開けると、旅のクライマックス。満を辞して菅田シェフとソムリエ松田さんによる饗宴が始まる。そのペアリングを味わうごとに、その日みた遠野の景色が目に浮かぶことだろう。ぜひ、遠野の風を感じるツアーへご参加いただきたい。

  • 「カッパ淵」では、カッパが釣れるらしい。
  • かっぱの茶屋は「座敷わらしソフトクリーム」が名物。小豆味がおすすめ。
  • 伝承園では、サイクリングの疲れを癒す、郷土食「ひっつみ」を。
  • 子どもだけでなく大人も楽しめる「こども本の森 遠野」。