あらゆる部位を異なる食感で楽しむ

 本州最北端にある青森県風間浦村。津軽海峡に面したこの村では、さまざまな魚介が水揚げされる。なかでもアンコウは「風間浦鮟鱇」として全国に知られている。
 風間浦鮟鱇は「きあんこう」という種類で、全国でも稀な漁法で水揚げされる。地元海産物店「駒嶺商店」の代表取締役・駒嶺剛一さんは「鮟鱇漁は一般的に底引き網漁で行われますが、風間浦村では固定式刺網漁が主流。生きたまま水揚げされます」と話す。固定式刺網漁は魚体を傷つけることが少ない漁法。風間浦村では網を仕掛けた翌日には引き上げられる。また、漁場と港が近距離にあるため、生かしたまま帰港することができるという。また、風間浦村では資源管理も行っており、体長20センチ以下の鮟鱇はタグを付けてからリリースしている。
 「スルメイカやカレイなどを食べる風間浦鮟鱇は、肝が太っています。特に1月から2月にかけては最高です」と駒嶺さん。
 鮟鱇は、刺身をあん肝醤油で味わうと絶品だが、今回、お勧めしたいのは「きあんこう鍋セット」。土鍋に鮟鱇と用意した食材を入れ、醤油タレを注いで煮込む。鮟鱇鍋の醍醐味は身や皮、ヒレなど食感の違いを楽しめるところだ。肝の濃厚な味もたまらない。駒嶺さんのお勧めの〆はおじや。「きあんこう鍋セット」で鮟鱇のおいしさを最後まで堪能しよう。

毎年2月第1日曜に「風間浦鮟鱇感謝祭」が開催され、伝統的な捌き方「鮟鱇雪中切り」の実演などが行われる。
風間浦村の鮟鱇漁は固定式刺し網漁。帯状の網を使用した漁で、網を仕掛けた翌日に生きた状態で水揚げする。

駒嶺商店の「きあんこう鍋セット」

■ 青森県風間浦村 ■

お勧めの〆はおじや。最後まで風間浦鮟鱇のおいしさを堪能できる。
活き締めで鮮度抜群の風間浦鮟鱇。

炭火焼きでじっくりと素朴な伝統焼き麩

 岩手県八幡平市で三代にわたり焼き麩専門店を営む「羽沢耕悦商店」。同店の主力商品「炭火焼南部手焼丸麩」は、焼き色が美しく、小麦の味がしておいしい。しかも、長時間煮込んでも煮崩れしない。
 店主の羽沢悦朗さんは、「初代から製法を頑なに守っています」という。その作り方は、最上級のグルテンと地元産小麦粉を使い、炭火でじっくりと焼き上げるというもの。1本ずつ手焼きするため、1日に作れる本数が限られる。しかし、昔ながらの素朴な味は評価が高く、リピーターも多い。羽沢さんの焼き麩は、食感がもちっとし、煮崩れしにくいため、味噌汁や冬ならではの鍋の食材として最適だ。また、肉の代わりにヘルシー料理にと使い方は多様。ご家庭のストック食材として揃えておきたい一品である。

工房の囲炉裏に座る羽沢悦朗さん。棒に生地を巻きつけてから炭火で焼く。きつね色に変化するにつれ、香ばしい匂いが立ち上ってくる。
最上級のグルテンと地元産小麦粉で作った生地を均等に巻きつける。これが意外と難しい。