こんにちは。
薬剤師の目線でいますぐ誰かに話したくなる「薬の豆知識」をお届けしております。

今回のテーマは「薬に対するコーヒーの影響」です。
こんなご質問をいただきました。
「朝、コーヒーを飲むのですが、食後に飲む薬に影響はありませんか?」
お薬は水で飲むのが良いことは知っているけれど、食事で摂る食べ物や飲み物は大丈夫なの?と疑問をもたれたのだと思います。
真摯にお薬と向き合っていただき、薬剤師として感激です。

早速、こちらの質問に対するお答えですが、「薬の種類によります」です。
なんとも曖昧な回答で申し訳ありません。
少し難しいですが、詳しく解説をしていきたいと思います。

解説の前に、食べ物や薬を摂ると「吸収→分布→代謝→排泄」という流れで体の外に出ていく、ということを知っておく必要があります。
今回のお話の中で重要なのは「代謝」です。
薬物を代謝することを特に「薬物代謝」といい、体の中に入った薬が「薬物代謝酵素」によって代謝されて、排泄されやすい形に変化していきます。

コーヒーに含まれている代表的な成分が「カフェイン」であることは多くの方がご存知のことと思いますが、カフェインは体の中に入るとCYP1A2という酵素で代謝されます。

カフェインと同様に、薬の中にはCYP1A2によって代謝され、薬効が減弱するものがあります。(すべての薬ではありません!)

もし、このような薬とカフェインが体の中に一緒に入ると、どちらも代謝のためにCYP1A2を必要とするため、取り合い・邪魔をし合う「拮抗作用」が起こることになるのです。
拮抗作用が起こると、薬の代謝が遅れ、血中で薬物の濃度が高い時間が長くなってしまうために通常よりも強い効果が出てしまう可能性があります。
強い効果が出ることは良さそうにも思えますが、薬には毒性を示さない適切な量があり、薬の量が多すぎることは副作用の発現に繋がってしまいます。
全ての薬は体の中に入った後、代謝されることを考慮して投与量が決められています。

ここまでの説明で、「薬の種類によります。」をもう少し詳しくお答えすると
「コーヒーはCYP1A2で代謝される薬に対して影響を及ぼす可能性があります」ということになります。
例えば、喘息の時に気管支を拡張するために飲むことがある「テオフィリン」や、精神科で処方される「抗精神薬」などがCYP1A2で代謝されるお薬なので注意が必要です。
(すべての喘息治療薬、すべての抗精神薬、という意味ではありません)

カフェインが含まれている飲料はコーヒーに限らず、紅茶や煎茶、抹茶、エナジードリンク、ウーロン茶やコーラなどがあります。

少し話はそれますが薬局や薬店で購入できる、かぜ薬などにはカフェインが含まれていることが多いです。
このようなお薬とカフェイン含有飲料との併用は、カフェインの過剰摂取となり、めまいや頻脈、動悸、吐き気を催すことがありますのでご注意ください。

もうひとつ、コーヒーの影響を受け易い薬があります。それは鉄剤です。
コーヒーには「タンニン」という成分も含まれているのですが、タンニンは鉄の吸収を阻害する作用があるのです。
先ほどとは異なり、「代謝」ではなく「吸収」を邪魔してしまうことによる影響です。
コーヒーと鉄剤を一緒に摂取すると鉄剤が体の中に吸収されにくくなるため、貧血治療効果が弱くなってしまう可能性があります。
鉄剤を服用している方は、ぜひ飲み物を見直してみてください(タンニンは緑茶にも多く含まれています)。

本日のまとめです。
コーヒーを飲むことで薬に影響を与えてしまう可能性があります。
対策をひとつ、ご提案です。
食後に服用するお薬でしたら、
食事を摂り、食後30分以内に薬を飲み、さらに30分くらい経ってからコーヒーを飲むと良いでしょう。
いま服用されている薬がコーヒーに影響を受けるのかが気になる場合は、薬剤師に聞いてみてください。

今日はコーヒーと薬の豆知識を紹介しましたが、実は、薬の効果に影響する食べ物や飲み物はまだまだあります。
意外にも、喫煙が薬に影響することも!?
次回以降、牛乳、ハーブティー、チーズ、納豆などの食品、そしてタバコが及ぼす影響のお話をしたいと思います。

杉山育美
岩手医科大学薬学部 准教授 博士(薬学)
薬剤師
スポーツファーマシスト
アスリートフードマイスター
薬剤師を身近に感じてもらいたいとSNSなどを通して発信中。
アスリートやサポートスタッフ、ご家族に対してアンチ・ドーピング活動をすると共に勝利のためには健康であることの重要性もお伝えしている。
近年はアスリートを含む女性の健康サポートにも力を入れている。