
こんにちは。
薬剤師の目線でいますぐ誰かに話したくなる「薬の豆知識」をお届けしております。
今回は漢方薬についてお話をしたいと思います。
漢方薬とは、古代中国で生まれ、経験の積み重ねにより確立されたものが日本に伝来された伝統医学のひとつです。
漢方医学に使用されるのが漢方薬であり、天然物である生薬を、原則として2種類以上組み合わせて作られています。
漢方薬の代表例として思い浮かぶものに葛根湯がありますが、葛根湯にも複数の成分が含まれています。
【葛根湯に含まれる有効成分】
カッコン、タイソウ、マオウ、カンゾウ、ケイヒ、シャクヤク、ショウキョウ
このように2種類どころか7種類も含まれているのです。
ちなみに、生薬とは植物である薬草や茎、葉などを想像されるかもしれませんが、実は動物由来のものや鉱物も含まれます。
それでは、どんな症状のときにどの漢方薬を飲むべきか?
私たちが服用することが多い、いわゆる西洋薬に比べて、漢方薬の選択は実に難しいのです。
なぜならば、「証」と言われる、体全体の状態を総合的に判断したうえで漢方薬を選択する必要があるからです。(これがとても複雑!)同じような症状でも患者の状態(気・血・水)や体質が異なると選択する薬も変わるのです。

例えば、先述した葛根湯。
葛根湯は風邪薬であると認識されている方が多いのではないでしょうか。
もう少し詳しい方は、風邪の初期に服用する薬、と理解されているかもしれません。
葛根湯の適用を正確に読み解いてみますと
「自然発汗がなく頭痛、発熱、悪寒、肩こりを伴う比較的体力のあるものの風邪の諸症状」とされています。
実は、体力がある方に適したお薬なのです。体力が消耗していて発汗している場合は別の漢方薬を選んだ方が効果を得ることができます。
また、漢方薬は体に優しいというイメージがあり、副作用がないと思われがちですが、薬である以上、誤った使い方をしたり長期間服用し続けたりすれば、望まない効果が出てしまうことが勿論あります。
体質改善を目的に長期的に服用する場合は、薬局やドラッグストアにて自己判断で購入するのではなく医師から処方してもらうことが望ましいです。
また、購入した漢方薬を1ヶ月程度試しても効果を感じない場合は受診することをお勧めいたします。
ちなみに、先ほどから出てきている葛根湯は長期間の服用がNGです。

最後に、漢方薬は食前(食事の30分前)や食間(食事の2時間後)に服用するように指示されているものが多くあります。
ですが、万が一飲み忘れて食事をしてしまっても、効果は少し弱くなりますが食後に服用していただければ大丈夫です。
服用のタイミングが難しい場合は、1日3回指示の場合は4時間以上、1日2回指示の場合は6時間以上の間隔をあけて服用すると良いでしょう。
また、アスリートの方はドーピングの観点より漢方薬の服用はお勧めしませんのでご注意ください。詳細や気になる点については、お気軽に医師や薬剤師にご相談ください。

岩手医科大学薬学部 准教授 博士(薬学)
薬剤師
スポーツファーマシスト
アスリートフードマイスター
薬剤師を身近に感じてもらいたいとSNSなどを通して発信中。
アスリートやサポートスタッフ、ご家族に対してアンチ・ドーピング活動をすると共に勝利のためには健康であることの重要性もお伝えしている。
近年はアスリートを含む女性の健康サポートにも力を入れている。