こんにちは。
岩手医科大学薬学部に勤務する杉山育美です。
薬剤師の目線で、いますぐ誰かに話したくなる「薬の豆知識」をお届けしております。
本日は、身近だけど何だか曖昧な「サプリメント」のお話です。
サプリメント、実は薬ではないことをご存知でしたか?
サプリメントは医薬品ではなく、栄養補助食品・健康補助食品として「食品」に分類されています。
明確な定義はありませんが、一般に、食生活の中で不足しがちな栄養成分や健康維持などに役立つ成分を補う食品、とされており、元々はビタミンやミネラル等の健康の維持増進に役立つ特定の成分を栄養補給や補助の目的で摂取するために製造されたものです。
厚生労働省では、「特定成分が濃縮された錠剤やカプセル形態の製品」とされています。
つまり、薬ではないけれど、錠剤やカプセルの形をしているので、サプリメントは薬であると勘違いしやすいのかもしれません。
世の中にはたくさんのサプリメントが販売されていますが、大きく以下のように分けることができます。
【ベースサプリメント】
健康維持に必要不可欠な栄養を補うためのサプリメント。不足すると健康維持に大きな影響を与えてしまう成分が多い。
例: ビタミン、ミネラル、アミノ酸、食物繊維、DHA、EPA、マルチビタミン など
【ヘルスサプリメント】
健康維持や美容を目的として使用されるサプリメント。免疫機能をサポートする目的などでも使用される。
例: カテキン、イソフラボン、ローヤルゼリー、プロポリス など
【オプショナルサプリメント】
体調の回復や、体の調子を整えるために使用されるサプリメント。日頃の食事では摂取することが難しい成分を補う。
例: グルコサミン、ハーブ、ウコン など
その他、アスリートのパフォーマンス向上が期待できるものをスポーツ栄養の分野ではエルゴジェニックエイドと呼んでいます。
医薬品とサプリメントが大きく違う部分は、サプリメントでは「効能効果」を謳ってはならず、「病気を治す」という文言を表示することも法律で禁止されています。
すなわち、サプリメントの摂取で体の不調が劇的に改善するようなことはないはずです。
本来、栄養素は食事から摂取することが望まれますが、必要な栄養素を食事から完璧に摂取することは難しいですよね。
そのような場合に上手に活用するものがサプリメントなのです。
逆に言うと、サプリメントは食事の代わりにはなりません。
毎日の食事でバランスの良い食事を心がけ、食事内容を見直したうえで不足しているものを補うという考え方が大切です。
余談ですが、鉄分はコーヒーなどに含まれるカフェインと結合するため、一緒に摂取すると吸収が阻害されるという特徴があります。
ですので、もし貧血気味でしたら、食後30分〜1時間はコーヒーを飲まないようにすると、いつもより鉄分が吸収されてサプリメントに頼らずとも症状が軽減するかもしれません。
このように、食べ合わせを意識するだけでも体調が改善していくことがあります。
昨今、サプリメント(機能性表示食品)の服用によると考えられる健康被害が話題になりましたが、健康になるために服用したものが裏目に出てしまうこともあるので注意が必要です。
また、サプリメントの服用が、病気を治療するために使用している薬の効果を減弱させてしてしまうおそれや、副作用の発現を誘発してしまう可能性もあります。
健康に良いと思って飲んだサプリメントが肝臓や腎臓に負担をかけることもあります。
服用中のお薬がある方は、サプリメントや健康食品を服用する際には必ず医師や薬剤師にご相談ください。
気軽に試せるサプリメントだからこそ、上手に使用してくださいね。
岩手医科大学薬学部 講師 博士(薬学)
薬剤師
スポーツファーマシスト
アスリートフードマイスター
薬剤師を身近に感じてもらいたいとSNSなどを通して発信中。
アスリートやサポートスタッフ、ご家族に対してアンチ・ドーピング活動をすると共に勝利のためには健康であることの重要性もお伝えしている。
近年はアスリートを含む女性の健康サポートにも力を入れている。