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北東北から発信する

牧場の力

 

シェアフィールドとしてものどかな風景の牧場

 一関市内を見下ろす高台に佐々木恭平さん一家が営む「佐々木牧場」がある。ここにいる馬たちは、かつて競馬や馬術などで活躍した「養老馬」。競走馬はレースを引退すると、天寿を全うすることなく生涯を終えてしまうこともあるが、佐々木牧場では、引退した馬を預かり、天寿を全うできるように世話をしている。
 恭平さんが、佐々木牧場で馬の世話を始めたのは、7年前。それ以前は、青森県黒石市の観光施設で働いていた。黒石市で馬車運行企画が立ち上がると、恭平さんは馬車部門に配属される。当時まだ動物に興味がなかった恭平さんだが、馬の世話をするうちに馬がいる日常に馴染んでいった。その時、一緒に馬の世話を担当したのが、現在の妻の牧恵さん。奥さんの実家が一関市花泉町で牧場を営んでいたこともあり、馬車運行が終了したのを機に、恭平さんも馬とともに岩手に移り住んだ。花泉町の牧場で3年過ごし、現在の一関市内に移転、佐々木牧場を継いだ。
 餌やり、厩舎の掃除、放牧……。動物の世話に休みはない。一度体調を崩すと昼夜を問わず看病をしなければならないこともある。命と向き合う仕事。年老いた馬だけに、最期を看取ることもある。
「最期は辛いですね。今までに何頭見送っただろう。一頭一頭それぞれの最期を覚えています。馬の一生をみた時、競走馬として活躍している時より、余生の方が長い。私ができることは、天寿を全うさせること。できるだけ元気で、最期まで幸せに生きて欲しいと願っています」と、恭平さんは澄んだ目で話す。

  • 牧場内にある自宅の土間のダイニング、ラックなどの収納は恭平さんの自作も多い。
  • 一関ICからも近く、一関市内を一望できるロケーション。

 のどかな景色に佇む馬の姿は、絵に描いたように美しい。佐々木牧場では、このロケーションを活かし、シェアフィールドとして、いろいろな体験の場に貸し出している。「ツリークライミングや、木工DIY体験教室、ロケーションを活かしたブライダルフォトなど、シェアフィールドとしても活用してもらいたいと思っています。この場を通して人と人が繋がることで、何か面白いことが起こりそう」と、期待に胸を膨らませる恭平さん。この場所を「ツミキの森」と呼び、いろいろなことに興味がある人が集まってきている。
 馬と人が牧場をシェアするような、距離感が心地よい佐々木牧場。「ピザ窯を作ってここでピザを焼いて食べようかなぁ」恭平さんがいうと、牧場に緑の風が吹き抜けた。

牧場内の木でツリークライミング体験会を行うことも。眺めのいい丘の上での木登り。大人も子どもも楽しめる。
  • 馬たちは、恭平さんに手綱を引かれて厩舎に帰る。
  • 牧場内のDIY専用の作業小屋。 工具や木材が揃い、建築士による体験教室も行われる。
ファン基金
養老馬が天寿を全うさせるには経済的な負担も多い。
「ファン基金」では、500円から馬を応援することができる。
応援資金は獣医師や装蹄などの費用に充当している。