縁側のような「陽まわり」のある暮らし

ビルダーと施主の「ご近所づきあい」

 岩手県一関市中里にある「郷の家―木の家南部―」住宅展示場。その隣にある家には、東日本大震災の津波で家を失った佐藤正幸さん・洋子さん夫妻が住んでいる。震災前は気仙沼市に居を構え、無垢材を使用した家に住んでいたという。家探しに奔走していたある日、「EC南部コーポレーション」の住宅展示場を見つけた。
 「家に入った瞬間、木の香りがして『ここだ』ってふたりで顔を見合わせたの」と、洋子さん。しかし当時は住宅展示場である。正幸さんが、この家に住みたいとビルダーに交渉した。
 「ご夫妻の人柄に惹かれて、地権者に掛け合い、お引き渡しとなりました」と話すのは、EC南部コーポレーションの小関一博さん。現在は、佐藤家の隣に新しい住宅展示場が建っている。
 郷の家の魅力は、なんといっても天然木を使用していること。佐藤家は築6年を経過しているが、今もなお木の香りがする。無垢材の家に住んでいた夫妻が、ここを終(つい)の棲家(すみか)に選んだのも頷ける。
 リビングでひときわ目を引くのは、薪ストーブ。ガラス面が大きく、火の揺らぎがよく見えるビルダーのオリジナルだ。家の断熱性能がいいので、冬は薪ストーブ1台で家全体が暖まる。天然木の家は湿度調整してくれるので、結露の心配も無く快適に過ごせる。
 リビングの大きな窓を開けると、もう一つのリビング「陽まわり」がある。ここは、縁側のような、サンルームのような場所。引き戸を開け放てば、太陽の光が差し込み、風が通り抜ける。普段は洗濯物を干すのに役立ち、洋子さんが育てる植物や、古道具など趣味を楽しむ場所でもある。
 かつて日本家屋にあった縁側。そこは、日向ぼっこをしたり世間話をしたりする場所。ここでは「陽まわり」が縁側の役目を果たし、ビルダーとのご近所づきあいを取り持っているかのよう。
 「ときどきスタッフの方とランチすることもあるのよ」と笑顔で話す洋子さん。施主とビルダーを超えたご近所づきあいが、暮らしをさらに楽しくしているようだ。

  • 薪ストーブは正幸さんの担当。薪用の棚までつくってしまうほど惚れ込んでいる。
  • 縁側のような第二のリビング「陽まわり」が目を引く。
  • 温もりを感じる珪藻土仕上げの壁。調湿効果もある。
  • 昭和初期の文机と、明治期の灰受けは、陸前高田の洋子さんの実家にあったもの。今でも大事にしている。

  • DATA
  • 所在地/岩手県一関市中里
  • 施工/2013年
  • 工法/木造軸組パネル工法
  • 床面積/138.80m²

  • EC南部コーポレーション株式会社
  • 郷の家―木の家南部― 住宅展示場
  • 岩手県一関市中里雲南111-2
  • TEL 0191-23-3578
  • 営業時間/10:00〜17:00
  • 定休日/火・水曜
  • http://www.ecsatonoie.jp